Aは,A所有の甲土地をBに売却したが,AからBへの所有権移転登記をする前に死亡した。Aの法定相続人は,子C及び子Dの二人であり,その相続分は各2分の1であったが,遺産分割協議が調う前に,Cが勝手に甲土地について単独で相続した旨のAからCへの所有権移転登記をした上,甲土地をEに売却し,CからEへの所有権移転登記をした場合,Bは,Eに対し,2分の1の限度で甲土地の共有持分の取得を主張することができるか?(予備H26-4 )
from 2026-01-05
Aは,A所有の甲土地をBに売却したが,AからBへの所有権移転登記をする前に死亡した。Aの法定相続人は,子C及び子Dの二人であり,その相続分は各2分の1であったが,遺産分割協議が調う前に,Cが勝手に甲土地について単独で相続した旨のAからCへの所有権移転登記をした上,甲土地をEに売却し,CからEへの所有権移転登記をした場合,Bは,Eに対し,2分の1の限度で甲土地の共有持分の取得を主張することができる。(予備H26-4 )
ムズ!
基本が詰まった良問に評価が変わった。以下の点を押さえていなければ解けない
B:未登記だがAから所有権取得(176)
この時点で土地についてBが実体上の所有者
B vs 相続人C・D
C・Dは包括承継人なので(少なくともこの場面では)177の第三者じゃない
→ Bは登記なくC・Dに自己の所有権を主張できる
B vs E
Eは相続人じゃないので 177の第三者になりうる
C→E売買(債権):全部売る契約としては成立(ただし実体上は他人物売買)
物権(所有権)の帰趨
Cの1/2→Eが取得
Eは登記あり、Bは登記なし
B vs E は177の登記レースになり、Bが対抗不可
Dの1/2
EはDの1/2を保持できず『無権利の登記名義人』が確定する
そもそも、Eは元から(Cが無権利で他人物売買してるので)Dの1/2を実体として取得できていない
もし、Eが超過部分を欲してDに対して177処理で争われると“未登記のDが負けてEが保持できる”ようにも思えるが、そのパターンは899条の2によって、Dは自分の法定相続分1/2を登記なく第三者Eに主張できる→ EはD側1/2を保持できない
cf .もし899の2がなかったら:.Dの持分取得は未登記の物権変動として、Eとの関係が177で処理されると考えることができる(実際には、昭38最判は899の2と同様の解釈をするので、こうはならない!)
まず整理:争いは2層ある
実体(誰が本当の持分を持つか)
CはDの1/2を持ってない → 実体としてはEに移らない
対抗(その“実体”を相手に言い返せるか)
これを決めるのが177(+相続特則)
ここで重要なのは:
「移ってない(無権利)」でも、相手に言えないと“負けたのと同じ結果”になる
177は「登記がないと第三者に主張できない」という防御不能ルールになりうる
登記に公信力がなくても、「言えない」せいで結果として保持される、が起きる
想定される素直な構成はこれ:
相続開始 → Dは実体として1/2持分を取得(包括承継)
でも Dは未登記
Cが単独相続登記→Eへ売ってEが登記
D vs E は「(当事者でも包括承継でもない)第三者」関係として 177の対抗問題にされる
D:未登記
E:登記あり
→ DはEに対抗できない
→ 実務的には EがDの1/2まで保持できてしまう
包括承継人Dは当事者のBに対抗できないので、BはDにも登記なく主張できる
EはD持分については無権利者の登記名義人なので、177条の「第三者」に当たらないので、BはEに対して自己所有を限度(元々のDの持ち分)について登記なくして対抗可
基素.icon昔論点だった?
GPT-5.2.iconはい、昔からの有名論点です。あなたの「逆流を899条の2が遮断する」という見取り図は、もともと判例で処理していた緊張関係(177との衝突)を、改正でルール化・再整理した、という歴史そのものです。
争点はまさにあなたが言う「逆流」
共同相続で各人に持分(実体)はあるのに、
登記がないと177の対抗関係に落ちて負けるのか?(負けると“実体がないはずの単独登記+転得者”が保持できてしまう)
これについて最高裁は、昭38・2・22で
共同相続人の一方が勝手に単独登記→第三者が転得して登記しても、
他の共同相続人は自己持分を登記なく主張できる(=逆流を遮断)
という判断を示しています。 (sak-office.jp)
その後、この種の「相続による承継と第三者対抗要件」を条文化して整理したのが民法899条の2で、改正相続法として2019年7月1日施行です(経過規定もここに明記)。 (法務省)
しかも899条の2は「判例の明文化」だけでなく、分野によっては**改めた(登記が必要になる範囲を置いた)**部分もある、という位置づけで解説されています。 (yokohama-roadlaw.com)
その後に気づいたが、同じ事が呉明植『物権法・担保物権法』第2版.iconp.53のコラムに書いてあった
「無権利の登記名義人」って何?
これはしばしば
*実体がない”というだけじゃなく
“実体がないうえに、相手方にも対抗できない(=177の保護圏にいない)”
まで込みのラベルとして使われる。
だから、
「Eは無権利名義人だから177じゃない」
ではなく
「(899の2等により)Dが登記なく主張できる → その結果Eは排除される → よってEは無権利名義人」
という順番。